秋もおしゃべりから
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


幼児用のカレンダーなどでは、
九月の意匠として
満月とお団子という“お月見飾り”が用いられることがたまにある。
言うまでもなく“十五夜”という日本の伝統行事を謡っているのだろうが、
15と聞いた子供たちは“九月十五日”の行事なんだと思いかねないので、
大人たちもそこはちゃんと説明しなければいけません。
九月十五日といや、某 銀髪写輪眼の上忍様のお誕生日ですが、
それを“敬老の日”だという覚え方をしていたところ、(それもたいがいですが)
ハッピーマンデー法のせいで毎年変わる代物にされちゃって
振り回されてる話も聞かないではありません。
海の日もそうですが、
思いがけない間合いにひょこりと赤く塗られた日があって、
あ〜あ なんでもう1日ずれてないんだと、
どうしようもないからこそ愚痴ったり苦笑したりするのも
祭日や休日への味わい深さだってのに。
つくづくと叙情に向いてません、日本政府。

 ……おや? 何の話をしてたんでしたっけ?(おいおい)

日本の様々な季節の行事を語るおり、
八十八夜とか二百十日とか、
八百八町とか三百六十五歩のマーチとか、あ・後半は違うか。
やたらと数字が絡むのも、ある意味 特徴で。
それらはたいがい“立春から数えて何日目”という意味がある。
夏の間際の八十八夜とか、二百十日といえば台風が多い頃合いだとか、
農耕に一番重要な自然環境の変化でもある、
“気候の変わり目”を示していることから、
最も重用されていた知識というか情報は、
二十四節季であったり、立春から数えてだったりしたわけで。

そんな中での“十五夜”は、
“仲秋の名月”と呼ばれている秋の満月と、それを眺める儀式のこと。
仲秋というのは、秋の半ばという意味で、
昔は 七月・八月・九月を秋としたので、
中の月の八月の、
そのまた真ん中に来る月を そうと呼んだものと思われる。
昔は芋と言えばこれだった“里芋”の収穫期にあたり、
今年もたくさん収穫出来ましたありがとうと、
とれた小芋を天の神様にお供えして感謝した、
大元は中国の祭事だったのが始まりで、
それがいつしか形のよく似た団子へ転じたそうです。
(なので“芋名月”という呼び方もある。)
旧暦の八月十五日は“十五夜”で、今年は九月の三十日。
ついでに言えば、
それへ添う“十三夜”は、今年は十月の二十七日。
月見を片方しかしないのは縁起が悪いといいます、
何とか覚えてて、そちらの満月も愛でましょう。



     ◇◇


毎年どこかでお浚いしているお月見談義でしたが、
ここまでカレンダーからずれまくりでありながら、
情緒的存在感の大きい風物詩もないもんで。
同じようにずれまくってるものといや“初午”というのがありまして、
年が明けて最初の午の日…というのを今のカレンダーで数えるもんだから、
極寒期の行事にされとりますが、
本来は桃の節句の手前の祭事だった。
そちらは存在自体も知らぬ人が多い代物だけれども、
お月見は ウサギが十五夜の月見て跳ねると歌われるくらいに、
人々にも馴染み深い存在ですのにねぇ。
あ・でも、今時のお若い人ならば、
今年も復活するのかな“月見バーガー”という順番だろか。
七夕とか花火大会、年末のクリスマスに除夜の鐘や初詣でくらいならば、
夜中のお出掛けの言い訳というか建前というか、
広く一般的な大義名分にもなりえるようだが。
これ以上夜中にしか出来ないことでありながら、
月見の会があるから遅くなるよという人は、
今時には まずいないんじゃあなかろうか。
俳句だの川柳だのをひねる風流な付き合いとか、お茶の会。
二百歩くらい譲って“月”に乗じたお題の映画の先行試写会くらい?
そろそろハロウィンも間近いのでという、
テーマパークのナイトプログラムはメジャーになっても、
十五夜なので月を見て帰るから遅くなるよというのは、ちょっと聞かない。


  大丈夫か、日本人。


 「ですよねぇ。」
 「昔の人は
  月がとっても青いからってだけで遠回りして帰ったらしいのに。」

 「…………。」

 え、何ですて久蔵殿? それはまた別の次元のお話では?
 確かに。シチさんて物知りなんだけどたまに軸がブレてますよねぇ。
 …………。////////
 やですよぉ、久蔵殿ったら。//////
 はいはい、判りましたから手を動かす。

そういうところがかわいいのだとでも伝わったらしい、
相変わらずの金髪母子なのはともかくとして。
ハッピーマンデーのフォローも空しく、
この秋の祭日はさほどにはくっつき合っていないのではあるが、
それでも、敬老の日と秋のお彼岸は1週間しか隔たりなくやって来るので、
甘味処の“八百萬屋”さんには、
続けざまという格好で生菓子の注文が入っておいで。
しかもしかも、秋という風流な頃合いでもあるために、
お茶の席への特別上製ものへの注文も加わっており、
そこへ月末のお月見用に創作和菓子をなんていう困った注文もあるらしく。

 「まあ、ゴロさんは見込まれるだけの甲斐性があるお人ですから、
  素人のわたしなんぞがワケもなくバタバタ慌てるこたぁないんですが。」

注文数だけを見ても大変なその上へ、
趣向を凝らしたものまで思案せねばならないなんて。
しかもしかもどんなに見事な出来になろうと、
それって大半は、注文した人の手柄にしかならぬ。
あらま、これはまた粋な、おもしろい趣向ですわね。
はい、今宵の宴のために作らせましたの おほほほほと、
反っくり返って笑うのは褒められるのは注文した人であり。
まま、誰の手になるものかを聞けば、
判る人には意趣自体も作り手の創意によるもので、
本来の手柄の主人が誰かは読まれ間違いしなかろとは思うものの、
食べちゃえばなくなる小さな菓子のこと、
時が過ぎても覚えてる人がどれほどいるものか。
配達用の化粧箱へ、
サッと組み立てられるよに折り目をつけるお手伝いをしつつも、
小さなお手々でえいえいと励むひなげしさんこと平八にしてみれば、
そこをこそ詰まらなく思うのか、
あ〜あという切ない溜息も出るようで。
いかにも悲壮という吐息をつきつつ、
小さな肩が目に見えて落ちるほど、
がっくしと萎えてしまった様子を卓袱台のお向かいに見やって、

 「ヘイさんたら、どんだけゴロさんがお好きなのやらですねぇ。」

白百合さんこと七郎次が、
青い双眸の座った目許をやんわりたわめると、
緋色の口元ほころばせて くすすと微笑う。
こちらさんもこういう作業はお得意と見えて。
お喋りの弾みで時たま手が止まったのはともかく、
畳み敷きのお茶の間の卓袱台の傍らで、
きちんと正座しての作業なのへも苦では無さげなお顔のまんま、

 「忙しいのは見込まれてのこと、
  誉れなんだし嬉しいけれど御身も大事と、
  そのジレンマに苛まれつつ、
  誉れをそのまま咬みしめられないんじゃあってところに焦れてる。
  しかもしかも、そんなのおかしいって怒ってるんじゃなく、
  そんな滸がましいこと先走って思うなんてって、
  自分へ怒ってもいるなんて。」

どれほどのこと、五郎兵衛さん第一なんでしょかねと
涼しいお顔で言ってやり、

 「う…、いやあの。///////」

弁が立っての果敢さでは、三華様がたの中で一番かも知れぬひなげしさんの、
俊敏即妙な舌を言葉を、詰まらせてしまえる奥の深さよ。

 「…最後のはちょっとシチさんの過剰評価ですが。」

絞り出すよに何とか付け足された一言へ、
あれ?そうでしょかと、口元の笑みに深みを増させる白百合さんだが、

 “手腕を高く認められての、人からの覚えも多き存在であればあったで、
  今度は悋気の虫が騒ぎ出すくせにねぇ。”

そういうヲトメなところも か〜わいいvvという
も一つの意味合いからの微笑でもあったようで。
会話の間もその手元にては 折り紙折り折り。
一見すると内職の現場のような有り様ではあるけれど、
それを手掛ける顔触れが、
どちらさまもすこぶるつきに可憐で愛らしい
十代のお嬢様たちだというのが微妙に異質であり。
4、5枚重ねて一度に、
四方の側面となる部分を立ち上げるための折り目をつけては元どおりに広げ、
蓋の部分の差し込み用の折り返しに、やはり折り目をつけては以下同文。
それを、大中小の様々な大きさ別に
段ボール1箱分ずつ仕上げておくのが今日の彼女らの目標であるそうで。
手指の肌が少々薄くて、
こういう作業には不向きかもと思われた久蔵お嬢様も、
運転手のおじさまから分けてもらったという白手套を着用しての参戦で。
黙々と打ち込んでおいでなせいか、
それとも日々のバーレッスンの…というよりも、
こっそり続けておいでの木刀の素振りの賜物か。
握力がずんと増しておいでだったこともあり、
今のところは3人中一番多くを仕上げておいでだが。
すんなりとした背条を今はちょっぴり柔らかくたわめて、
軽くうつむき作業に勤しむお姿は、
苛烈華麗な紅ばらというよりも、風に揺れるコスモスのお花のような嫋やかさ。
肉づきの薄い口元やすべらかな頬、
細いあご先といった繊細な造作のお顔は日頃から表情も薄くて。
そんなせいでか、冷ややかで凛然としたクールビューティだと思われがちだが、
実をいや、とんでもないところが無垢だったり無邪気だったりし。
今も、

 「あ…久蔵殿、紙くずが…。」

けぶるような金の綿毛が額を覆うよに降りた前髪に、
ボール紙の裁断くずだろう細い細い紙くずがくっついていたの、
取りましょうねと七郎次が手を延べて来たのへと、

 「〜〜〜〜。///////」

幼子みたいなことで世話を焼かれたからか、
それとも大好きな七郎次のきれいな手で触れられたからか。
息まで止めてるんじゃなかろかというほど大仰に動作を止め、
頬やら耳朶やらの、
奥深いところまで純白なのだろうと思わす、
深みのある白い肌に淡い朱色を上らせてしまう照れようが、
あまりに拙くも稚(いとけな)く、何とも言えずの愛らしい。

 「〜〜〜〜。//////」
 「あらまあvv//////」

そのまま自分からも七郎次の手へ頬を擦り寄せ、
仔猫のように懐く様子は、
向かいに座してた平八が思わずスマホを取り出して、
動画収録しちゃったほどに絵になっており。

 “シチさんもまあまあ、嬉しそうなお顔になってvv”

金の綿毛といい、色白な肌といい、
秀麗とか洗練とかいう言葉はこの風貌のためにあるような、
ちょっぴり冷たく見えるけど、
それでも見ずにはおれぬ端正な面差しといい。
ほっそりとした痩躯に見合う、凛とした所作といい。
羽根と真綿とマシュマロで出来ていると言われても
疑いなく頷けそうなほど透徹な、
こうまで掛け値なしに美しい女の子から、
大好き〜〜〜っと素直に懐かれては、
誰だってとろけそうな心地にもなるというもの。

 だっていうのに

妹か弟がほしかったものか、
いやさ、これも前世から持ち越した感覚か、
ただでさえ母性の強い七郎次にしてみれば、
あまりの整いように寄ることも憚られそうな美少女相手に、

 「ほらほら、あと2束、仕上げちゃいましょね?」

ちょっぴり名残惜しげではあれ、作業が先ですよと促せる、
頼もしさつきの真っ当な慈愛を繰り出せるところも大したもので。

 「……。(頷、頷)」

久蔵の方も方で、それは素直に作業に戻る。
九月に入っても昼のうちはなかなか残暑が引かなんだけれど、
それでも日陰や屋内にいる分には、
風通しさえ良ければ何とかエアコンに頼らずいられる、
いい気候になりつつあって。

 「そうそう、聞きましたか?」

夏休み明けの短縮授業態勢だった中、
だとすれば、学校に居残ってすることがないでもなかったけれど。
今日の進行状況は、
特に彼女らがいなくては追っつかないワケでも無さそうだったので。
本当に忙しい折にこそ必要とされる、臨機応変の利く柔軟な即戦力、
切羽詰まるだろう頃合いに、必ず発揮させますからというツケの前倒し。
たまにはクラスの皆様という耳目のないところで、
じっくり羽を伸ばすよに3人だけで過ごしたくなるのを堪能したくて。
臨時のレッスンがあってだの、急な来客があってだの、
示し合わせるように言い訳し、お先にと帰って来ちゃった彼女らで。
それでも、何もかも放り出して来た訳じゃあない証拠に、

 「今年の学園祭、
  五月祭とは別に女王を決めて、
  表彰式や終幕の辞なんかで看板娘みたいに引っ張り回すって段取りを
  実行委員会が企んでるようですよ。」

中等部でも学園祭にメイプルクィーンという女王様を選ぶそうで。
そっちは久蔵殿が
前人未到の三年連続就任という奇跡をやらかしたと
話には聞いてたひなげしさんや白百合さんだが、

 「決めるって、推薦とか投票とかですか?」
 「そういうところでしょうね。」

五月祭の方では、
正確には“五月の女神”を選び出し、
隋臣役の二人と合わせての3人が、
仰々しくもドレスアップし、冠をいただいた後、
様々な催しを回ったり、ご挨拶に立ったりと結構忙しく引き回されたのを、
こちらのお三方も経験済みで。

 「メイプルクィーンはちなみに…。」

ちらと視線を寄越したひなげしさんだったのへ、

 「女神と変わらぬ。」

久蔵殿のこの短かな言いようから伺えるのは、
五月の女神と同じよに、文字通りの山車扱いで引き回されるという旨らしく。

 「…いやな予感がしなくないんですが。」
 「いやですよ、冗談抜きで。」
 「……。(頷、頷)」

わざわざそんなものを設けた裏に、
こちらのお三方に綺羅々々しい格好をさせてみんなで拝みたいという
そんな思惑がちらちらと覗く。
自惚れるわけではないけれど、
五月の女神が暗黙のうちながら一期に一度だけとされており、
よって、彼女らがもう一度就任するのは無理な相談で。
だがだが、あの艶姿をもう一度見たいというお声は、
五月祭りのたびに蒸し返されてもおり。

 “何度も何度も二年生なのも問題ですよね。”

  ……う〜るさいわねぇ。(苦笑)

ともかく。
この秋の学園祭に際しては、
いつもの“だったらいいな”がもう一歩進んだようで。
どうしても叶わぬことならば、
いっそ新しく企画しちゃうというのは
いかがでしょうか?…なんてこと、
言い出すお嬢様がとうとうおいでだったらしく。

 「…でもまあ、私たちが選ばれるとは限りませんし。」

あと少しというラストスパートに誤魔化すか、
視線は手元へ落としたまんま、
ひなげしさんがそんな言いようをし、

 「そうですよね。
  ほら一年の道明寺さんとか、そりゃあ愛らしいと噂だし。」

 「……。(そうそう)」

 忘れちゃいけない、宇都木さんだってお姫様には打ってつけの愛らしさ。
 そうだった、いらっしゃいましたね。
 久蔵殿、推薦しちゃえば?
 …、………。(…それもいいかも?)

身にかかる火の粉を払うためなら、人に押し付けますかお姉様がた。

 「だって…。」
 「誉れかも知れませんが、実際は窮屈なだけなんですよぉ。」
 「…、…、…。(頷、頷)」

それに…と、
一際切なそうに眉根を寄せた白百合さんが言うことにゃ。

 「勘兵衛様がいつ来られるか判らないのに、
  この身を束縛されている訳に参りません。」

誰でもなくのご本人が、
うんっと大きく頷いたもんだから。
手元へ余計な力が入り、
横長の変わり仕様の化粧箱の本身のほう、
5枚を一気にお釈迦にしちゃった白百合さんだったりし。

 「あ…。」
 「……。」
 「わ。////」

ごめんなさい、うっかりつい、えとあの…と。
それこそ真っ赤っ赤になっての、
大きにうろたえる七郎次お嬢様だったのへ。
出来のいい白桃のように、白い頬へ甘い緋色を散らしたお顔の、
懸命さのたどたどしさとそれから、何とも言えない色香に飲まれたか。
今度は自分が庇う番だということか、
まずは久蔵さんが、
白百合さんには珍しい覚束なさを支えるようにと、
細いが柔らかな肉づきの可憐な肩を抱いてやり、
大丈夫だよ大丈夫だよと囁いて差し上げ。

 「そうですよ、シチさん。」

それより手のほうは無事ですか?
擦りむいたり切ったりしてませんかと、
ひなげしさんも真摯なお顔でもっと大事なことを案じて差し上げることで。
失態よりもその弾みの大元、ついつい激高しかかった想いのほうへも
どうどうどうと宥めるような柔らかなお声を掛けていて。


  お嬢様たちの忙しい秋は、
  今まさに始まったばかりだったのでした。






  ※おまけ※


 「…………結婚屋。」
 「今日はドライバーなんですけどね、キュウ…もとえヒサコ様。」

 「島田の都合…、」
 「どうですかね。
  警視庁での当番がどうこうじゃあなくて、
  起こること次第なお人ですものね。」

 「……。(頷)」

 「まあ…弄れないこともありません。
  何となったらブラフっぽい騒動で引き回すついで、
  お望みの場所まで連れ出すことも、可能ではありますよ。」

 「………それはダメだ。」
 「お?」

 「縄つきを出してまでとは…。」

 「ははは、
  そこまで覚悟しなきゃあ簡単には動かない御仁なのは
  織り込み済みってわけですか。」
 「……。(頷)」

寡黙なお嬢様の白いお顔がバックミラーの中で頷く。
こうまで離れると判りにくいが、
紅色の双眸はきっと、
ちょっぴり甘い、優しい色合いに暖まっているのだろ。
かつてのお仲間にして、七郎次お嬢さんの想い人。
それをどれほど買っているかを、
口惜しいだろけど素直に認めておいでなればこそ、
即答で示した彼女であり。

 “それと。
  あの辣腕警部補を振り回すだけの、
  リアルな騒動を仕立てる腕、
  見込まれてもいるってことでしょかね。”

珍しくも迎えに来よと呼び出された、
三木家のチャコールカラーのセダンのお抱え運転手。
色合いは濃色ながらも、柔らかそうな質はお嬢様とお揃いかと思わす髪に、
一応は三十代だろうに、頬も顎も骨張らずという、
甘い造作の繊細な顔容をしておいでで。
物腰も丁寧で礼儀正しく。
どこまでもソフトで流麗でありながら、
さりとて、控えめなのは今の立ち位置が立ち位置なせいなだけ。
時折、おやとか意外そうに眸を張るお顔の、
冴えて精悍な表情こそ、真のお顔なのだろうというのは久蔵にも判る。
彼もまた、記憶・気性をそのまま持って転生した“転生人”で、
あの七郎次がかつての前世で何かと支えてもらったという、
島田隊の元“双璧”の一角だそうだし。

 “今だって……”

いくら浮世離れしている久蔵お嬢さんでも、
だからこその鋭い感覚から、拾っているものがあるようで。
それはなめらかな運転を続ける、
実は彼女のボディガードも時々請け負ってるらしい、
だというに、謎多き男に向かい、

 「ハーミアを守った男に礼を…。」

そんな一言をぼそりと放ったところが、

 「  …っ☆ うおっとぉ。」

おお、初めて動揺しおったぞこいつと、
がっくんと揺れたことへの驚きよりも、
そっちへがっつりと食いついている、
のほほんしてるんだか鋭いのだか、
実は実は一筋縄では行かないお嬢様には違いない、
紅ばら様だったようでございます。




    〜Fine〜 12.09.14.


  *かつて居た世界よりは平和だし安寧だし、
   自由を謳歌出来る場所や時代のはずなのに。
   大好きなお人らが優秀すぎるがゆえ、
   ちょっとした逢瀬さえ侭ならぬという、
   不自由さへの不平をこぼすお嬢様がたかも知れませんが、

    「いやいや、いや。」
    「お主らほど奔放な娘らも そうはおらぬぞ。」

   ぬぁんて、
   保護者の皆様から打てば響くの反駁をいただきそう。(笑)
   とりあえず、今年も今年でお忙しい秋が始まる予感です。

ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

メルフォへのレスもこちらにvv


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